本研究は令和3年度から2年間にわたって取り組み、京都国立博物館で令和3年に開催された「鑑真和上と戒律のあゆみ」及び令和4年開催の「最澄と天台宗のすべて」の両特別展覧会と密接な関係を持たせながら実施するものであった。特別展「最澄と天台宗のすべて」では、当時の天台戒家の第一人者であり、法勝寺流の基礎を築いた恵鎮円観の弟子、理玉和尚の創建した等妙寺に関わる文化財が出展された。等妙寺は京都・法勝寺の遠国四戒壇として重きをなした寺院であり、その旧境内は発掘が進み、史跡にも指定され、法勝寺流の教学を伝える文化財の調査も進められている。一方、その本寺にあたる滋賀・西教寺所蔵法勝寺伝来文化財、滋賀・聖衆来迎寺所蔵元応寺伝来文化財の調査も進められている。
研究活動の中心となる「研究発表と座談会」は、「中世天台戒家の思想と文化」をテーマとして、特別展(4月12日〜5月22日)に合わせて4月29日に京都国立博物館講堂で開催し、全国から約70名の仏教美術の研究者や市民が参加した。
研究代表者の大原嘉豊氏(京都国立博物館保存修理指導室長)が司会を行い、舩田淳一氏(金城学院大学文学部教授)が「中世天台戒家の思想」、鯨井清隆氏(大津市歴史博物館学芸員)が「文化財にみる興円・恵鎮と元応寺流・法勝寺流」、幡上敬一氏(鬼北町教育委員会教育課文化スポーツ係係長)が「史跡等妙寺旧境内の調査成果と等妙寺の文化財」と題した研究内容をそれぞれ発表した。発表に続く座談会は発表者3氏と、参加した研究者とのやり取りで議論が深まり、今後の研究の展望に期待がもたれた。
当日の発表内容と座談会の概要は報告書第49冊として令和4年度に刊行した。国内外の研究者、研究機関、図書館などに約600冊を無料配布し、研究に役立ててもらう。また一般市民には印刷原価で頒布している。
A次年度以降の研究活動について
次年度令和5年度以降の調査研究課題については、研究委員会委員の淺湫毅・京都国立博物館上席研究員と準備を進め、「浄土信仰とその造形」をテーマに、令和5年度から2年間取り組むことになった。
令和5年度は「浄土真宗を中心とした祖師信仰とその造形」を研究課題とし、代表研究者を羽田聡・京都国立博物館美術室長がつとめ、共同研究者を選出。また、令和5年3月から京都国立博物館で開催される特別展「親鸞―生涯と名宝」に合わせ「研究発表と座談会」の開催を予定し、令和5年3月開催の研究委員会と理事会・評議員会に事業計画の議案として提出し承認された。
2.若手研究者育成を目的とした研究奨励金給付事業
毎年、若手研究者研究奨励金給付選考委員会(11人)が選んだ大学院博士後期課程在籍者3名(以内)に対して、奨励金としてそれぞれ20万円を給付している。例年、選考委員会を開催して各委員の採点結果をもとに協議し、高得点であった下田麻里子(早稲田大学大学院)、付恩浩(東北大学文学大学院)、王?(早稲田大学大学院)の3氏を選んだ。在学証明書の提出を受け、4月末までに奨励金を支給した。3氏からは年度内に実績報告書が送付された。
なお、コロナ禍で中国での実地調査が困難であるとの理由で調査研究が「次年度に延期」されていた令和3年度受給者の大沼陽太郎氏(東北大学大学院)は、令和5年3月に中国での調査研究を実施し、実績報告書が年度内に提出された。
事業報告の附属明細書
令和4(2022)年度事業報告には「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」第34条第3項に規定する附属明細書に記載すべき「事業報告の内容を補足する重要な事項」が存在しないので、これを作成しない。 |